独身の兄や姉の遺産、弟や妹・甥や姪が相続できる?相続放棄したらどうなる?
独身の兄や姉が亡くなった場合、遺産は誰が相続するのでしょうか?弟や妹は相続できるのでしょうか。甥や姪はどうでしょうか。もしも、全員が相続放棄をして相続人が誰もいなくなった場合は、どうなるのでしょうか?
この記事では、独身の兄や姉などの長子が亡くなった場合の相続や相続人がだれもいない場合どうなるかなどについてわかりやすく説明します。是非、参考にしてください。
目次
[ご注意]
記事は、公開日(2019年11月27日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
兄姉が遺言書を残していないか確認
独身の兄や姉が亡くなったときや、両親など親族が亡くなったときは、まず遺言書がないか確認しましょう。
遺産を誰に譲渡するかを指定されている法的に有効な遺言書がある場合、基本的にはその遺言内容に従うことになります。遺言書が無ければ、法定相続分で分配します。
遺言には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3つの方式があり、それぞれの遺言書の性質によって保管場所が異なるため、事前に知らされていない場合は探すことになります。
相続問題でお悩みの方は
まずは弁護士にご相談ください
”自筆証書遺言”及び”秘密証書遺言”はどこ保管されている?
自筆証書遺言及び秘密証書遺言の場合、遺言書原本は、遺言者本人や遺言執行者、遺言者から遺言書の保管を委任された人、法務局などの遺言保管所等によって保管されます。
遺言者本人が保管しているケース
亡くなった方本人が保管していたと思われる場合は、遺言書が保管されていそうな場所を入念に探します。金庫、鍵付きの引き出しや、本棚、食器棚などもくまなく探してみましょう。
遺言執行者などの専門家が持っているケース
遺言書が専門家等に預けられている場合は、相続人が遺言者から生前にその旨を聞かされていれば、相続人から保管者に連絡します。
聞かされていない場合は、保管者からの連絡があるまで、相続人は遺言書の存在を知る方法がありませんが、保管者からの連絡は、保管料の入金がないことや定期連絡がないこと等によって遺言者の死亡を知ったときなので、それがいつになるかはわかりません。
貸金庫
遺言書は本来は、銀行の貸金庫には保管しない方がよいのですが、遺言者がそのことを知らずに貸金庫に保管していることがあります。
相続人が貸金庫を開けるには、金融機関の所定の用紙に、相続人全員が実印を押印し、印鑑登録証明書を添付する必要があります。
なお、遺言保管所以外で見つかった遺言書に封がされている場合、勝手に開封してはいけません。
検認前に開封すると5万円以下の過料(行政罰)を科されることがあります。
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”公正証書遺言”はどこに保管されている?
公正証書遺言の場合、遺言書原本は公証役場で保管され、遺言者には遺言書の正本と謄本が交付されます。
公証役場での遺言書の保管の有無については、遺言者の死後、公証役場で検索してもらうことができます。
遺言書がなかったら法定相続分で分ける
遺言書がない場合は遺産は法定相続分で分配しますが、相続には以下のように優先順位があります
- 子供
- 直系尊属
- 兄弟姉妹
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相続順位ごとにわかりやすく説明していきます。
第1順位:子供が相続
亡くなった時に独身でも子供がいる場合があります。離婚した元配偶者のところに子供がいる、認知した子供がいる場合などは、子供が相続人となります。
亡くなった兄に認知した子供がいるかどうかは、兄の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得して確認すれば分かります。
故人が亡くなった後でも認知は可能
生前に認知済みの子がいなくても、遺言で認知をすることもできますし、また、死後3年以内であれば認知の訴えを提起することができ、これが認められると、生まれたときから親子関係があったことになります。
つまり、相続手続きがすべて済んだ後に死後認知がされた場合は、認知された子が相続人となり、相続手続きをやり直すことになります。
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認知した子の孫に相続される場合
兄によって認知された子Aが兄よりも先に亡くなっていて、Aに子B(つまり亡くなった兄の孫)がいる場合、BがAの代襲者として亡くなった兄の相続人となります(代襲相続)。
このように、相続手続きには理解の難しい仕組みや制度がたくさんあります。正しく、そして不利益が出ないようにするために、ぜひ専門家に相談してみることをご検討ください。
第2順位:子供がいない場合は直系尊属が相続
子供及びその代襲者がいない場合は、直系尊属(父母や祖父母のように直通する系統の親族で前の世代の人)がいれば、直系尊属が相続人になります。
親等の異なる直系尊属がいる場合は、親等が小さい人だけが相続人となります。親等とは、親戚関係の法的な遠近を表す単位のことです。
父母は一親等で、祖父母は二親等なので、父母と祖父母が健在の場合は、父母だけが相続人になります。
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第3順位:子供も直系尊属もいない場合は兄弟姉妹が相続
子供及びその代襲者も、直系尊属もいない場合、兄弟姉妹が相続人になります。兄弟姉妹が複数いる場合は、遺産を均等に分けることになります。
また、兄弟姉妹が死亡、欠格または廃除によって相続権を失った場合には、兄弟姉妹の子が代襲相続します。代襲相続人が複数いる場合は、被代襲者の相続分を代襲相続人で按分します。
直系尊属と傍系親族の関係の図解
先述の第2順位の直系尊属である父母や、第3順位の兄弟姉妹との関係を図解すると以下のようになります。
亡くなった兄弟姉妹が他にもいて子供がいた場合
例えば、あなたのほかにもう一人(仮に姉とします)いたとします。そして、姉は、兄よりも先に亡くなっていたとします。
姉には、息子(亡くなった兄からみると甥)と娘(亡くなった兄からみると姪)がいた場合、姉が存命であれば、あなたと姉の相続分は2分の1ずつになります。
しかし、姉は亡くなっているので、姉の子2人(甥姪)が、姉の相続分を均等に取得します。つまり、あなたの相続分が2分の1、甥姪の相続分がそれぞれ4分の1ずつとなります。もし姉の子が1人だった場合は姉の分2分の1をそのまま相続します。
兄姉の遺産を相続したときは相続税は2割加算
2割加算とは、相続や遺贈(遺言によって財産を与えること)などによって財産を取得した人が、被相続人の1親等の血族(代襲相続人を含む)と配偶者以外の人の場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。
兄弟姉妹は、2親等なので、2割加算の対象となります。
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相続人全員が相続放棄した場合の遺産の行方
亡くなった独身の兄や姉に離婚して別居している子供や認知した子供、直系尊属もいない場合は、先述のとおり、あなたを含めた兄弟姉妹(及びその代襲者)が相続人となりますが、その全員が相続放棄をすると、相続人が誰もいなくなってしまいます。
相続人がだれもいない場合は、次の優先順で遺産を取得します。
- 債権者
- 受遺者(遺言によって財産をもらい受ける人)
- 特別縁故者
- 遺産の共有者 ※共有している遺産のみ対象
- 国
相続人全員が相続放棄をした場合の手続きの流れ
なお、相続人全員が相続放棄をした場合の手続きの流れは、次のように進められます。元から相続人がいない場合も同様です。
- 利害関係人等が家庭裁判所に相続財産管理人の選任を申し立てます。
- 家庭裁判所が必要があると判断したときは相続財産管理人が選任されます。
- 家庭裁判所が相続財産管理人が選任されたことを知らせるために公告を行います。
- 2か月後、相続財産管理人が相続債権者と受遺者に対して請求を申し出るべき旨を2か月以上の期間を定めて官報に公告します。
- さらに上記の公告期間経過後、家庭裁判所は、財産管理人の申立てによって、相続人を探すために、6か月以上の期間を定めて公告を行います。
- 期間満了までに相続人が現れなければ、相続人がいないことが確定します。
※通常は、申立て前に既に相続人調査を行い、相続人がいないことを確認したうえで、申立てを行っているでしょうから、この期間に相続人が現れることは、ほとんどありません。 - 特別縁故者がいる場合は、特別縁故者は、相続人を探すための公告期間満了後3か月以内に、財産分与の申立てを行います。
- 必要に応じて、相続財産管理人は、家庭裁判所の許可を得て、相続財産を換価します。
- 相続財産管理人は、債権者や受遺者への支払いをしたり、特別縁故者に相続財産を分与するための手続きを行います。
- 財産が残った場合は、残余財産を国庫に返納します。
なお、相続放棄をしたからといって直ちに相続財産の管理義務を免れるわけではありません。家庭裁判所で相続財産管理人が選任され引き継ぐまでは相続人による相続財産の管理義務があります。
まとめ
以上、独身の兄や姉が亡くなった場合の遺産の相続について説明しました。
折角築いてきた財産が、ひとり世帯であったがために、死後思いもよらぬ遺産の分け方になるのは不本意と思われた方もいるでしょう。
大切な財産を自分の望んだ後世へ繋げていくためには、遺言書を作ったり、財産目録を作成するなどの準備をすることをおすすめします。特に遺言書はとても有効な手段ですが、誤った作成方法だと法的に無効になってしまうおそれもあります。間違いのないよう行政書士などの専門家にサポートを受けることを是非ご検討ください。なお、相続税対策は税理士に相談しましょう。
兄弟姉妹に遺言書の保管場所をあらかじめ伝えておくのも大切ですが、もし、兄弟姉妹に伝えたくない理由があったり、親族がいない方は、生前に死後事務委任契約をするのも一つの方法です。検討したい方は以下の記事を参考にしてください。
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