遺産相続で司法書士に相談できるケースと費用の相場、弁護士との違い
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記事は、公開日(2019年4月26日)時点における法令等に基づいています。
公開日以降の法令の改正等により、記事の内容が現状にそぐわなくなっている場合がございます。
法的手続等を行う際は、弁護士、税理士その他の専門家に最新の法令等について確認することをおすすめします。
司法書士に依頼できること
遺産相続に関して、司法書士には、主に次のようなことを依頼することができます。- 遺言書の作成の代行、自筆証書遺言の保管
- 遺留分放棄の許可申立書の作成
- 推定相続人の廃除申立書の作成
- 遺言書の検認申立書の作成
- 遺言執行者の選任申立書の作成、遺言の執行
- 相続放棄申述書の作成、相続の限定承認申述書の作成
- 相続財産管理人の選任申立書の作成
- 特別縁故者に対する相続財産分与の申立書の作成
- 遺留分減殺請求の内容証明郵便の作成
- 遺産分割協議書の作成の代行
- 法定相続情報一覧図の作成・法定相続情報証明制度の利用申出の代行、相続関係説明図の作成の代行
- 相続手続きの代行(不動産の所有権移転登記、預貯金の解約・払戻し、有価証券の名義変更、自動車の移転登録等)
- 供託金の還付請求の代行
遺言書の作成の代行、自筆証書遺言等の保管
遺言書の作成は、司法書士に依頼することができます。 普通方式の遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言がありますが、いずれの場合でも司法書士の依頼することができますし、それぞれの方式の特徴についての説明も受けることができます。 しかし、遺言内容についての相談は、弁護士法の非弁行為に該当する可能性があるため、基本的には弁護士に相談すべきです(相続税については税理士に相談)。 つまり、遺言内容が決まっている人は司法書士や行政書士に依頼してもよいですが、決まってない人は弁護士に依頼するのがよいでしょう。 遺言内容が決まっていて司法書士と行政書士とで依頼先を迷っている場合は、司法書士は不動産に精通しているので、遺産に不動産が含まれる場合は、司法書士に依頼するとよいでしょう。不動産がない場合は、行政書士でも司法書士でも、どちらでも構いません。 また、3つの遺言方式について、簡単に説明します。 自筆証書遺言とは、自筆(自書)で書かれた遺言のことです。 司法書士に文案を作成してもらい、それを元に自書します。 自筆証書遺言は、公正証書遺言と違って公証役場では保管されません。 遺言書の盗難や変造を防ぐためには、保管場所を誰にも知らないようにすべきですが、遺言者の死亡後に遺言書が発見されなければ意味がありません。 そこで、遺言書の作成を依頼した専門家に遺言書の保管も併せて依頼することで、盗難・変造や発見されないリスクを回避することができます(保管を依頼する場合は、後述の遺言執行についても併せて依頼するとよいでしょう)。 なお、2020年7月10日からは法務局で自筆証書遺言を保管する制度が開始されるので、以降は、保管を専門家に依頼する必要はなくなるでしょう。また、保管時に法務局で形式不備をチェックしてくれるので、形式不備により無効になるリスクを回避することができます。 自筆証書遺言について詳しくは「自筆証書遺言が無効となるケースとケース別の正しい書き方を完全解説」をご参照ください。 公正証書遺言とは、公証役場で公証人に遺言書を作成してもらってする遺言のことです。 公証人が遺言書を作成するのであれば、司法書士に依頼する必要はないのではないかと思われるかもしれません。 しかし、司法書士に依頼することによって、公証人とのやり取りや証人の手配等の手間を削減することができます。 また、公正証書遺言の場合は、遺言書原本は公証役場で保管されます。 正本と謄本(いずれも原本の写し)は遺言者に交付され、通常、遺言者にて保管されます。 司法書士等に正本と謄本の保管を依頼しても構いませんが、公正証書遺言の場合は公証役場に原本が保管されているため、自筆証書遺言ほどは保管に気を遣う必要もないため、基本的には、遺言者自身の保管で十分でしょう。 公正証書遺言について詳しくは「公正証書遺言で最も確実かつ誰でも簡単に遺言をする方法を丁寧に解説」をご参照ください。 秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも明かさずに、かつ、遺言の存在が公証人によって証明される形式の遺言のことです。 秘密証書遺言で遺言書を作成するのは、公証人ではなく遺言者です。文案の作成は司法書士等の専門家に依頼することもできます。 また、遺言書の保管についても、自筆証書遺言と同様に自己管理ですので、作成を依頼した専門家に遺言執行と遺言書の保管を併せて依頼した方が安心です。 秘密証書遺言について詳しくは「秘密証書遺言を利用すべき場合と雛形から秘密証書遺言を作成する方法」をご参照ください。 また、遺言書の作成費用については「公正証書遺言の費用を総まとめ!弁護士、司法書士、行政書士の費用」をご参照ください。遺留分放棄の許可申立書の作成
遺留分とは、一定の相続人が、相続に際して法律上取得することが保障されている、遺産の一定の割合のことをいいます。 相続人となる人や各相続人の相続分については民法に定められていますが、これは遺言によって変更することができますし、生前贈与や死因贈与(贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与)によって相続財産が減ってしまったり無くなってしまったりすることもあります。 そのような場合でも、一定の相続人は、遺産の一定の割合を遺留分として取得することが保障されているのです。 そして、遺留分を侵害された人が、贈与や遺贈を受けた人に対し、遺留分侵害の限度で贈与や遺贈された財産の返還を請求することを遺留分減殺請求と言います。 そして、遺留分の放棄とは、遺留分減殺請求をする権利を放棄することを言います。 遺留分の放棄は、家庭裁判所に遺留分放棄の許可を申立て、これが認容されると、遺留分を放棄することができます。 申立てができる時期は、相続開始前(被相続人の生前)に限られます。 相続開始後(被相続人の死後)に遺留分を放棄したい場合の手続きはなく、遺留分減殺請求権を時効成立前までに行使しないことによって権利は消滅しますし、また、遺留分を侵害する内容の遺産分割であっても相続人全員が同意していれば有効です。 遺留分放棄の許可申立書の作成は、司法書士に依頼することできます。 弁護士に依頼することもでき、弁護士の場合は、申立書の作成だけでなく審判の手続きを代理することができますので、弁護士に依頼した方が安心です。 ただ、費用は司法書士の方が安く設定されているケースが多いでしょう。 なお、行政書士に依頼することはできません。 遺留分の放棄について詳しくは「遺留分を放棄させたい人や放棄を求められた人が知っておくべき全知識」をご参照ください。推定相続人の廃除申立書の作成
推定相続人の廃除とは、遺留分をもつ推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき人)が、被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたり、著しい非行があった場合に、被相続人が、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することによって、推定相続人の持っている遺留分を含む相続権を剥奪する制度のことです。 推定相続人の廃除申立書の作成は、司法書士に依頼することができます。 弁護士に依頼することもでき、弁護士の場合は、申立書の作成だけでなく審判の手続きを代理することができますので、弁護士に依頼した方が安心です。 ただ、費用は司法書士の方が安く設定されているケースが多いでしょう。 なお、行政書士に依頼することはできません。 推定相続人の廃除について詳しくは「相続廃除の意味とは?排除は誤字!推定相続人の廃除で遺留分をなくす」をご参照ください。遺言書の検認申立書の作成
遺言書の検認は、相続人に対して、遺言の存在とその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など、検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。 公正証書遺言を除く遺言書の保管者(保管者がいない場合にはその遺言書を発見した相続人)は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。 遺言書の検認申立書の作成は、司法書士に依頼ことができます。 司法書士のほか、弁護士に依頼することもできますが、行政書士には依頼することはできません(行政書士は裁判所に提出する書類の作成代行はできません)。 なお、司法書士は、代理人として遺言書の検認を裁判所に申立てることや、検認期日に同席することはできませんが、弁護士は同席することもできますし、本人が欠席して弁護士だけ出席することもできます。 しかし、費用面では、弁護士よりも安く対応してくれる司法書士が多いようです。 ウェブでいくつかの事務所の費用を調べてみると、弁護士の相場は10万円前後、司法書士の相場は3万円前後のようです。 検認期日への同席は、それほど必要性の高いものではないでしょうから、費用面を考えれば、司法書士に利があるように思えます。 しかし、遺言書が適法なものかどうか少しでも疑いがあるような場合は、弁護士に検認手続を依頼し、検認期日に同席してもらった方がよいでしょう。 遺言書の検認について詳しくは「遺言書の検認とは?遺言書が見つかったら知っておくべき検認の全知識」をご参照ください。遺言執行者の選任申立書の作成、遺言の執行
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。 一般的な遺言内容の場合は、遺言執行者は選任されていなくても構いませんが、その場合は、相続人と受遺者全員の署名、押印と印鑑証明が必要になる手続きも多数あり、手続きの度に相続人全員に連絡して、署名などを集めるのは、なかなか大変です。 その点、遺言執行者は、単独で相続手続きを行うことができるので、スムーズに進めることができます。 また、相続人や受遺者が単独で行うことができる手続きもありますが、一部の相続人や受遺者が勝手な手続きをしてしまうリスクもあります。 ですので、遺言執行者が必須でないケースでも遺言執行者を選定した方が手続きが安全かつスムーズに進むでしょう。 遺言執行者の選任方法には、次の3つがあります。- 遺言書で遺言執行者を指名する
- 遺言書で遺言執行者の選任者を指名する
- 家庭裁判所に遺言執行者の選任を申立てる
相続放棄申述書の作成、相続の限定承認申述書の作成
相続が開始した場合に、相続人は、次の3つのうち、いずれかを選択できます。- 単純承認
- 相続放棄
- 限定承認
相続財産管理人の選任申立書の作成
相続財産管理人とは、相続人がいない場合や、すべての相続人が相続放棄や限定承認した場合等に、相続人の代わりに相続財産を管理する人のことです。 相続財産管理人は、申立てに応じて、家庭裁判所が選任します。 相続財産管理人の選任を申立てることができるのは、利害関係人等です。 ここでいう利害関係人とは、被相続人の債権者、特定遺贈の受遺者、特別縁故者、被相続人と財産を共有している人、相続放棄した元相続人や元包括受遺者などです。 相続財産管理人の選任申立書の作成は、司法書士に依頼することができます。 弁護士に依頼することもでき、弁護士の場合は、申立書の作成だけでなく審判の手続きを代理することができますので、弁護士に依頼した方が安心です。 ただ、費用は司法書士の方が安く設定されているケースが多いでしょう。 なお、行政書士に依頼することはできません。 相続財産管理人について詳しくは「相続財産管理人を選任すべきケースほか相続財産管理人に関する全知識」をご参照ください。特別縁故者に対する相続財産分与の申立書の作成
特別縁故者とは、次のいずれかに当てはまる人のことをいいます。- 被相続人と生計を同じくしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- 被相続人と特別の縁故があった者
遺留分減殺請求の内容証明郵便の作成
遺留分減殺請求や、遺留分減殺請求を受けた場合の対応について、専門家に相談や依頼をしたい場合は、弁護士のみが対象となります。 しかし、遺留分を侵害している人に対して遺留分減殺請求を行うための内容証明郵便の作成のみであれば、司法書士に依頼をすることもできます。 遺留分減殺請求について詳しくは「遺留分減殺請求で相続財産を取り戻す方法と遺留分減殺請求の排斥方法」をご参照ください。遺産分割協議書の作成の代行
遺産分割協議書とは、その名称のとおり、遺産分割協議の結果を書面にしたものです。 遺産分割協議書は、遺産分轄協議を行った場合に必ず作成しなければならないわけではありません。 しかし、遺産分割協議を行ったときには、ほとんどの場合に遺産分割協議書が作成されます。 遺産分割協議書を作成する主な目的は、次の2点です。- 協議成立後に揉めないように決まったことを明確にしておくため
- 遺産分割の手続きに利用するため
法定相続情報一覧図の作成・法定相続情報証明制度の利用申出の代行、相続関係説明図の作成の代行
法定相続情報証明制度とは、法定相続人(法律で定められた相続人)は誰で、各法定相続人は被相続人とそれぞれどのような間柄なのかという情報を証明するための制度です。 法定情報証明制度は、2017年5月29日開始したばかりの比較的新しい制度です。 この制度が開始される以前は、相続手続きにおいて相続情報を証明するために、逐一、戸籍謄本等の大量の書類が必要でした。 それが、この制度によって簡単に証明できるようになったのです。 法定相続情報証明制度の手続きが済むと、認証文が付記された法定相続情報一覧図の写しが何通でも無料で交付されます。 法定相続情報一覧図とは、法定相続人が誰で各法定相続人は被相続人とそれぞれどのような間柄なのかという情報を一覧化した図のことです。 この法定相続情報一覧図の写しが、従来の戸籍謄本等の大量の書類の代わりに、法定相続情報を証明してくれるので、相続手続きを円滑に進めることができるのです。 なお、制度の利用は任意なので、制度を利用せず、従来通りの方法によって法定相続情報を証明しても構いません。 法定証明情報証明制度の手続きは、次のような流れで進めます。- 必要書類の収集
- 法定相続情報一覧図の作成
- 申出書への記入
- 登記所への申出
相続手続きの代行
遺産分割協議がまとまり、遺産分割協議書を作成したら、相続手続き(遺産分割手続き)を行うことができます。 遺産に含まれる財産の種類として多いのが次の4つですが、そのいずれの相続手続きも司法書士に依頼することができます。- 不動産(「相続登記を自分でスムーズに行うため全知識と司法書士報酬の相場」参照)
- 預貯金(「預金がある場合の遺産分割協議書の書き方と銀行での相続手続き」参照)
- 自動車(「車を相続する前に絶対に知っておかなければならないたった5つのこと」参照)
- 有価証券(「株式を相続する前に知っておくべき株式相続の流れをわかりやすく説明」参照)
供託金の還付請求の代行
供託とは、金銭、有価証券などを国家機関である供託所に提出して、その管理を委ね,最終的には供託所がその財産をある人に取得させることによって、一定の法律上の目的を達成しようとするために設けられている制度です。 例えば、地主・家主が死亡し、その相続人が誰であるか不明の場合は、賃借人は、地代・家賃の弁済供託をできます。 相続人は、相続不動産の地代・家賃として弁済された供託金の還付を供託所に請求することができます。 このような供託手続きや供託金還付請求の手続きも司法書士に依頼することができます。 弁護士に依頼することもできますが、供託に関しては、司法書士の方が普段から手続きに慣れていて、また、安く請けてくれることが多いようです。 なお、行政書士には、供託を依頼することはできません。司法書士の選び方
司法書士に選び方について説明します。口コミ(クチコミ)の確認方法
レストラン等を選ぶ際はウェブ上で口コミ(クチコミ)を確認してお店を選ぶということをしている人も多く、レストラン等の口コミを投稿し閲覧できるサイトも多くあります。 しかし、現状、全国の司法書士の口コミが網羅的に掲載されているサイトはほとんどありません。 現状、司法書士の口コミを掲載しているほぼ唯一のサイトは、Googleマップです。 Googleマップでは拠点ごとに口コミが掲載される仕組みになっています。 したがって、同じ事務所でも東京のオフィスと大阪オフィスでは異なる口コミが掲載されています。 このような口コミを閲覧できる機能は、一見、司法書選びに有用に思われますが、注意点もあります。 一つ目の注意点としては、口コミの掲載数があまり多くないということです。 まだ口コミが一つも掲載されていない事務所も多いです。 二つ目の注意点としては、口コミは誰でも投稿でき、その口コミが事実に基づくものか検証されていないという点です。 Googleマップの口コミは、Googleアカウントさえあれば、誰でも投稿することができます。 その口コミが事実に基づく正当なものかどうかは分からないので、あくまで参考程度に留めておくことが賢明でしょう。おすすめの選び方
当サイトでは、相続手続き等に精通した司法書士が掲載されています。 以下のリンク先のページから、お住いの都道府県と、相談内容(分からない場合は選ばなくても構いません)を選択して、検索してください。 事務所名をクリックすると、詳細な情報を確認することができます。 司法書士を選ぶ際は、依頼したい問題に精通しているかどうか以外に、自分(依頼者)との相性(相談しやすさ)、信頼できるか等の指標も重要です。 司法書士との間に心理的な垣根を感じてしまう場合、訊きたいのに訊けないとか、伝えた方がよいかもしれないが伝えにくいとかということが生じてしまいます。 司法書士のコミュニケーションがうまくいかないと、ストレスになってしまいますし、よりよい結果を得られない可能性が生じてしまいます。 そして、いくら気さくで話しやすくても、信頼できない司法書士は避けた方がよいでしょう。 例えば、連絡するといったのに連絡がないとか、費用についてしっかりと説明してくれないというような師匠書士は避けるべきです。 初回の面談時に、気になる点は遠慮なく質問し、疑念が残る場合は、依頼せずに、他の司法書士にも相談してみた方がよいでしょう。相談前に事前準備は必要?
相談前に事前準備が必要かどうかは、相談内容によります。 まずは、電話やメール等で弁護士に問い合わせましょう。 問い合わせる際には事前準備は不要です。 司法書士や事務員が、必要な情報を質問して引き出してくれます。 相談時に用意した方がよい資料等がある場合は、司法書士や事務員から指示があるでしょうから、あれこれと気を揉むよりも、まずは問い合わせた方がよいでしょう。まとめ
以上、遺産相続で司法書士に相談できるケースと費用の相場等について説明しました。 当サイトに掲載されている司法書士も司法書士選びのご参考にしていただけると存じます。。この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。
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